地域おこし協力隊は、協力隊を研究する学者がいるくらいですから世間一般的にはかなり特殊な仕事だと思います。田舎を知らない人が都会から飛び込んでいって、ムラ社会的な組織や人をサポートしたり、その場所で事業を起こすのですから。普通の会社では当たり前のようなことが通用しないことも多々あります。仕事をする上で当然気遣ってくれるだろう、というポイントがずれていたりします。コミュニティーが狭すぎて日々のコミュニケーションに疲れてしまったりすることがあります。
多くの協力隊OB・OGはそんなギャップに悩みながら立ち向かい、地域に溶け込んで今があるのだと思います。既に制度が発足してから10年以上が経ちますが、培われていたノウハウや心得などを先輩達や研究者たちが残してくれています。直接的に役に立つことは少ないかもしれませんが、少しでも心を落ち着かせる一助となればと思い、ここにいくつかご紹介します。
※スライド資料は2021年6月にスケダチで開催した協力隊初任者研修で、桒原良樹さんが発表した資料を使用しています。
文責:田口比呂貴
①地域は、地域おこしする気がないのでは?
ひとつの体系づけられた理論なので、全ての地域において当てはまるわけではないと思います、と前置きをしつつ。
赴任した地域で人口減少や高齢化が進み、地域づくりに対してある種の諦めに似た雰囲気があったり、お祭りや自治活動そのものに活気がない状態であった場合、最初から特産品を作る、観光商品を作るといった事業形成型の支援を行うことはかえって逆効果になるかもしれません。人は前向きな気持ちじゃない状態で新しいことをやろうとするとどこかに無理が生じて、愚痴っぽくなったり、ただやるだけになったり、長続きしなかったり。あまり良い雰囲気も成果も得られないものだと思います。
活気がない状態であればむしろ、住民がやっていることの手伝いをしたり、行事に参加したり、住民の不安や気持ちに寄り添うことが大切なのかもしれません。若者が淡々と地域活動を支援する背中が、地域を少しずつ元気づけたり、勇気づけたりする。一緒にやることで小さな成功体験が積み重なっていく。その過程で地域の人たちが少しずつ前向きになったり主体性が生まれてきたりするのではないかなと思います。
最初から「やる気がないからダメだ!」と決めつけるのではなく、時間をかけて一緒に主体性を育んでいくような余裕を持てるといいのかもしれませんね。
参考:「地域おこし協力隊の原点と今、これからの展望」(公社)中越防災安全推進機構 稲垣文彦氏【島根県地域おこし協力隊研修会】|一般社団法人しまね協力隊ネットワーク
②自分の活動は地域のためになっているのだろうか?
上記であげたような寄り添い型のサポートは、成果が実感しづらいもの。寄り添い続けたところで自分は地域の役に立っているのだろうか、と思ってしまうことがあるかもしれません。でもね、協力隊が入って活動を共にしていなかったら、地域の活力は年々低下し、出来ていたことがドンドン出来なくなっていく、ということが起こっていたかもしれない。一方で、協力隊が入って活動を共にしていたら、前の状態が維持されていくかもしれない。
周りも評価がしづらいところではありますが、地域の人はきっと見てくれている。維持されているだけでも大きな成果だと思います。目新しいことをしていないからといって悲観することはありません。
③活動をひとりでやってる気がする…
自分に与えられたミッションや仕事に責任を感じて、地域の人に負担をかけまいと自分でこなそうと多くの仕事を抱え込んでしまう場合があります。慣れない環境で慣れない活動に取り組んでいれば尚更、ストレスが掛かってふさぎ込んでしまう。そんな経験をした協力隊も少なくありません。
地域活動は本来、地域の人たちと一緒に行っていくもの。集落行事、道普請、地域清掃などの活動を通じて少しずつ関係性ができていくことで、新しい事業なども相談しやすくなったり、根回ししやすくなったりします。1年目は地域を知り、地域の人たちと仲良くなる、くらいのペースで焦らず活動しても良いと思います。
自治体を越えた協力隊同士の交流は自分の活動に直接結びつかないことが多いですが、同じような境遇に悩んでいたり、モヤモヤしていることを口に出すことでモチベーションが維持できたり、一緒にイベントを開催するキッカケになったり、定住する決断の後押しになったりもします。地域おこし協力隊という同じ立場だからこそ話せることもたくさんあるので、横のつながりも大切にしてくださいませ。
スケダチが開催している研修会でも、参加者同士が交流する時間を設けています。知り合うキッカケにもなりますので、ぜひ活用してみてください。
④気持ちが落ちてしまった。
・着任直後ショック:着任前に思い描いていた像とのギャップや関係者との意識の違いが主な原因
・自分は何者なんだろうメランコリー:行政や地域住民から、協力隊導入についての意図がくみ取れないことや活動の将来性に不安を覚えることが主な原因
・引き受けて自分探しジャーニー:様々な依頼を引き受けることで自分の気持ちを保つ状態
・自分を見つけた高揚ゾーン:活動の軸になりうるものとの出会いや将来性に地手の手ごたえを感じることで、気持ちが高揚する状態
・カウントダウンブルー:任期終了を控え、任期終了後が見通せず、今後の身の振り方について思い悩む状態
・吹っ切れるハイ:任期終了を直前に、不安材料の解消や任期後の見通しが立ったことでお、モチベーションが上がる状態
協力隊の3年間の中で、気持ちが浮き沈みすることはよくあります。地域おこし協力隊になる人は、ピュアで素直な人が多いと思います。なので、地域の人の愚痴っぽい話を何度も聞かされてウンザリしてしまったり、仕事の依頼のされ方が雑に感じたり、思い描いていた事業をやろうにも地域や行政があまり乗り気になってくれない、といった事柄に出くわすと、真面目に受け止め過ぎて気持ちが沈んでしまう。
また、「3年間でどうにか自立できる生業の種を育てなければいけない、という焦りも加わって色んなものに手を出し、自分が何のために協力隊になったのかわからなくなったり。そんな経験をした協力隊も少なくないのかなと。
このグラフはよくまとまっていて、自分が協力隊だった頃を振り返ってみてもとても共感できます。思い悩んだ時に、「自分は今この段階にいるんだ」と思い返せば少し心が落ち着くのかもしれませんね。
終わりに…
長々と制度や活動内容についてご紹介させて頂きました。
でも、「これを知ったから大丈夫!」なんてことはありません。日々目の前の現実と向き合うことでいろんな経験をしていく中で地域が身体の中に入っていく。地域も協力隊の活動している背中を見続けることで少しずつ、「心から受け入れよう。」「協力しよう。」「自分たちでも頑張ってみよう。」という気持ちになっていくんじゃないかと思います。
起業とか事業継承とか、大きな責任を背負って立つ人たちの気概には、本当に驚かされます。山形県内にも起業して飲食店やコミュニティースペースを運営している先輩がいたり、地域の人たちと協同で会社を作った人もいます。一方で、会社に就職しながら協力隊時代の活動を小さくとも続けていたり、アルバイトをしながら自分の生業を育てたり、山形県から離れたけれど、今も赴任した地域とつながって活動している人もいる。3年後の生き方は、その人それぞれです。
「経済を活性化させたり移住者を増やすことが、地域で生きる目的ですか?」
3年間はとても短いですが、人生はずっと続いていきます。
あまり根気つめすぎず、つまずいたら少し立ち止まって、ゆっくり温泉につかったり山に登ったりしてみるのも良いと思います。これだけの自然に囲まれ、美味しい食に囲まれている環境は、都会では味わえないものですから。
最後に、大したお役に立てないかもしれませんが、困ったことがあればスケダチに相談してみてください。呑みましょう!なんてお誘いも、ウェルカムです。
※コロナ禍なので、オンラインとかになるかと思いますが。笑
Mail : sukedachishonai@gmail.com
(まずはメールでご一報くださいませ。ご相談は基本的に山形県内の地域おこし協力隊員に限ります。)
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