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地域おこし協力隊員1年目に読んでほしい。『知らないとあとで大変かも。協力隊の制度と地方自治体のお金の流れのポイントを整理しました』

更新日:2021年8月20日

新しく地域おこし協力隊になると、田舎の空気は美味いし星空は綺麗だし、毎日キャンプしているような充実した日々を送るようになります。いや、個人差かなりあるけど。でも、美味しいご飯にありつくことは間違いないでしょう。


 一方で、着任して数か月が経つと今までにあまり経験したことないようなストレスを抱える隊員も少なくありません。地域の人との距離感、行政の方とのコミュニケーションなどなど…。どこかにボタンの掛け違いがあるのですが、「事前に確認すれば済む話だったのに。」ということも結構あります。


あとで知って無駄なストレスを抱えないように、むしろ先手を打てるように、この記事では協力隊の制度と協力隊に関わるお金について、ポイントを絞って解説します。

制度と聞くとルールが明確に決まっていると思いきや自治体に委ねられているとこもかなりあるので、確認・相談が必要な場面などについても触れています。


※スライド資料は2021年6月にスケダチで開催した協力隊初任者研修で、桒原良樹さんが発表した資料を使用しています。

文責:田口比呂貴


協力隊制度の2つの大きな特徴

補助金から補助人へ 

補助金は一般的にインフラ整備や施設建造などの成果がハッキリと見えるハード面に対して交付されるが、この制度では人件費に補助金を出せるようにしたことが画期的だった。


地方分権、地方自治(緑の分権改革)

補助金=税金なので、目的や用途が細かく定められていることがほとんど。一方で、協力隊制度の補助金は大きな枠組みを国が定め、その範疇で地方自治体がいろんな用途にカスタマイズして使うことが出来ます。つまり、国のお金でありながら自治体の裁量に任せている部分が大きい。総務省は事後的にお金の流れをチェックするに留まっています。


地域おこし協力隊推進要綱に書かれているポイント

地域おこし協力隊員と地域の想いやニーズ、その両方を満たしていくことが大切。

隊員が自己実現のためだけに活動することや、地域/行政側が「協力隊だから指示したことだけをしていればいい」という姿勢はお互い不幸になりかねない。行政・隊員・地域の三者が連携し、3年間トータルでそれぞれが設置して良かったと思えるよう丁寧に進めていく必要があります。



協力隊制度の事業概要

※地域協力活動って何?

⇒総務省からは具体的な内容の指示はなく、自治体や地域の事情、隊員の能力や適性などに応じて地方自治体が自主的な判断で決定するもの。


<地域協力活動の例>

・ 地域おこしの支援(地域行事やイベントの応援、伝統芸能や祭の復活、地域ブランドや地場産品の開発・販売・プロモーション、空き店舗活用など商店街活性化、都市との交流事業・教育交流事業の応援、移住者受け入れ促進、地域メディアなどを使った情報発信 等)

・ 農林水産業従事(農作業支援、耕作放棄地再生、畜産業支援 等)

・ 水源保全・監視活動(水源地の整備・清掃活動 等)

・ 環境保全活動(不法投棄パトロール、道路の清掃 等)

・ 住民の生活支援(見守りサービス、通院・買物のサポート 等)

・ その他(健康づくり支援、野生鳥獣の保護管理、有形民俗資料保存、婚活イベント開催 等)


財政措置(総務省からの支援)

特別交付税措置って、なんだ?

協力隊員一人あたり470万/年を上限に国から地方自治体へ特別交付税措置という形で支給されます。


470万円の内訳=報償費(人件費):270万まで 、活動費:200万まで 


※先に少し触れたとおり、活動費は自治体の裁量が大きく幅広い用途で使える設計になっています。


-普通交付税と特別交付税-

地方自治体への国からの財政支援措置(国から地方自治体へ支援するお金)の種類として、普通交付税と特別交付税があります。


・普通交付税

「どの地域に住んでいても普通の行政サービスを受けることができる」よう税収不足を国から自治体に支給されるもの。


・特別交付税

特別交付税は災害等があって「特別なことでお金がかかる」場合に国から自治体に支給されるもの。

※普通交付税も特別交付税も当然ながら国の予算の範囲内で、という上限があります。


特別交付税の場合、国から自治体に「この災害があったから支給しました。」という個別の明細が説明されません。なので、自治体の財政担当者からすると「明細がないので国から本当に支給されているのか分からない。災害があって交付されたかもしれないし、他自治体で大規模災害があれば私の市町村の特別交付税は減らさせるかもしれない。」と考えてしまいます。

協力隊の報償費(人件費)と活動費も特別交付税扱いで、明細がないので国から交付された、という保証がなく、現場レベルの財政担当者は自治体独自で準備しなければならない予算と同等扱いで考えます。そのため、協力隊担当者は「例え特別交付税がなくても、他の分野と比較しても協力隊の報償費や活動費は必要だ!」と財政担当部署に示す必要があります。つまり「国から交付されるから報償費も活動費も必ず満額予算化できる」とは簡単には言えないのが現状です。


一方、国の視点で言えば、本来、地域づくりはボトムアップ型で自治体ごとに取り組むことであるとして、敢えて特別交付税措置にしているそうです。なので、最終的には財政措置は行うにしてもその前段階では自治体からの持ち出しで自治体の覚悟を問うている設計となっているようです。



活動費って年間200万円使えるんじゃないの?

新しく協力隊になった人が勘違いするポイントとして、活動費200万円を全て隊員の活動に使える」と思っていることが上げられます。

実際は、活動費から協力隊が生活・仕事をする上で必要不可欠な住宅や車両の借上げ費、自治体にもよりますが報償費上乗せ分(50万まで可)などが毎年計上されており、活動で使用できるお金は100万円にも満たないケースが少なくない。くわえて、業務で使用する筆記用具、プリンターのインクやコピー用紙などの消耗品なども活動費から捻出されることが多いです。


更に大事なのは、活動費の裁量権の大小(=隊員がどのくらい自由に提案して使えるかどうか)は自治体によって異なるということ。「担当職員に言っても活動費を全然使わせてくれない!」「予算がないって言われた!」というケースが見受けられますが、隊員に与えたミッションに準じて自治体側で活動費の用途を決めて予算を組んでいるので隊員が立案して予算化する余地がほとんどない、という自治体も少なくありません。

これは募集/応募段階では非常に見えづらい部分。説明会や面接の段階で、行政担当の方から活動費の裁量権についても説明があるとより丁寧なのかもしれませんが…。


ただし、協力隊も覚えておかなければいけないのは、毎年10~11月頃から次年度の予算が組まれていくので、協力隊1年目はオーダーメイドのような活動費を組むことが難しいということ。予算化の流れについては次の、地方自治体のお金の流れを参照してください。


※動かせる活動費がほとんどなくて活動資金に困っても、諦めずに他の助成金を活用するなとして活路を開いていくこともできます。


地方自治体の予算組みってどんな風に進んでいくの?

これも協力隊に知っておいて欲しいポイント。協力隊に関する報償費、活動費がどんな流れで予算に組まれていき、どんな流れで支給されていくのか、という自治体のお金の流れのこと。

これを理解してないと、次年度の活動計画と活動費の用途を担当者と相談するタイミングを逃すかもしれないので、結構重要。


で、その流れについて上の図でなんとなく理解いただけるかなと思いますが…。


例えば…

2021年4月に着任した人の予算(報償費・活動費等)は2020年度内に決定しています。

なので、協力隊が活動を始めてから、予算化されていた家賃や車リース代、消耗品代などが都度支払いに充てられ、2021年度末に特別交付税措置として総務省から自治体に使用した分の経費(報償費・活動費)が支払われる、という流れになります。


繰り返しになりますが、2022年度予算の場合は、

2021年の10~11月頃に予算を起案し、担当⇒課⇒部⇒財政担当⇒首長⇒議会の承認を経て、予算が確定します。担当から議会を通過するまで、12月~3月まで掛かるので、次年度の活動費や活動内容について毎年10月までには予算資料を元に、担当者と相談する必要があります。


活動費を使ってどんな事業をするかについては協力隊や地域の活動によりますが、いずれの事業でも「来年度やりたい事業はこれです。目的、目標はこれで、こういう方法で取り組みマス。なので、このくらいのお金が必要で、内訳はこれです。」と事業ごとに組み立てる必要があります。

ただ、あまりにも客観性に乏しいと担当者も上司や財政課に説明することが難しくなるので、例えば住民アンケートを取るとか、事例や経験談を調査したり、他の分野と比較したりしながら事業を実施すべき理由を掲示できると一層、現実味が増していくと思います。公金を使用するので、計画的にいきましょう♪



副業ができる協力隊とできない協力隊がいるのはなんで?

協力隊が地域に定着できるか否かは、副業の可否も大きくポイント。


任期中から少しずつ自主事業でお金を稼ぐ訓練や販路を広げる活動、商品をブラッシュアップしていく活動ができると、任期終了後の定着もスムーズにいきそうですよね。

逆に、就職する予定もなく、起業する、ないしは自主事業を一つの生活の柱にしたいのに任期中の副業が一切禁じられていては、任期後に定着できるか否か不安になりそうですよね。


なので副業が出来るか否かの雇用体系は結構重要。現在の体制をまとめたのが上記の表となります。


〇会計年度任用職員の場合

自治体との雇用関係があるので厚生年金、社会保険が適用される一方、地方公務員法の適用を受けることになる。そして、副業ができるか否か、副業してよい内容についてはフルタイム/パートタイム共に自治体への確認が必要です。

正職員も含めてどんな場合であったら副業できるかが明文化されていないのが現状で、「副業が解禁された」というのは「副業ができるケースが明文化された」ということになります。つまり、現状ではできるかどうかは個別判断となっています。そのため「前例がないから難しい。」となってしまうケースが少なくない。正職員よりは協力隊の方が「副業を認めよう」というベクトルにはいきやすいと思いますが、フルタイムとパートタイムで分類せず「副業してよい内容の確認が必要」なのが現状です。


〇個人事業主として業務委託の場合

自治体との雇用関係はないので雇用保険や労災は適用外であり、社会保険は国民年金、国民健康保険を自ら納める形となる。確定申告も自分で行う必要がありますが、地方公務員法の適用は受けず、副業も可能となります。とはいえ周囲からは協力隊=公務員?として見られることもあるので、副業する際には内容について担当者などに相談・確認をしておいたほうが無難です。



いかがだったでしょうか。


自治体ごとに違いすぎてハッキリとしたことが言えないのがモヤモヤしますが、なにかを考えるキッカケになれば嬉しく思います。

山形県内で活動している協力隊員であれば個別対応もしていますので、相談事などあればぜひぜひご一報くださいませ。


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