ゲスト:瀬尾恵美さん(左上)×聞き手:佐久間麻都香さん(中央上)
◎瀬尾恵美さんプロフィール
山形県鶴岡市藤沢出身。2014年に静岡県から実家にUターンし、その夏に第二子を出産。実家が農家のため子育てをしながら農家の手伝いをする。現在はシングルマザーで両親とともに農業に従事。大学卒業後求人広告会社に勤めていた経験を生かし販路開拓を模索中。
―自己紹介をお願いします。
私は鶴岡市藤沢出身で、今もそこに住んでいます。大学で栃木県宇都宮に、卒業した後も宇都宮で仕事していました。結婚を機に静岡に移住して、6~7年くらいいました。その後に実家に戻ってきた、というのが8年前です。いろいろあって、シングルマザーで子供2人と両親二人の5人暮らしで、農業は3人でやっています。
―いつかは鶴岡に帰ろうと決めていたのですか?
私はあまり帰るつもりはなかったんです。親が農業やっていて、やりたくないと思って逃げるように鶴岡を出て行きました。実はまったく帰る気はなくて。元旦那がある程度の年齢になった時に、「会社で仕事をするより農家をやってみようかな。」と言い始めて、私も反対する理由もなかったので一緒に戻ってきました。やりたくなかった農業が今や楽しくやれていたりするし、帰ってきてから新しい繋がりがドンドンできていて楽しいです。シガラミみたいなのもあるんですけど、面白いなと思ってやっています。
―帰ってきてから最初は農業はやらないつもりだった?
外に働きに出るのも嫌だったので、農業を手伝いつつ新しいことができたらいいなと。農業の販売促進とかの方面でやれたらいいなと思っていました。ナリワイの起業講座を受けたり、山形県がやっている6次産業化の勉強会に参加したり。Uターン1年目は子供生まれて間もなかったのであまり動けなかったけど、次の年から動くようになりました。それで、両親と同居で同じ仕事をしているので、元旦那も両親と24時間一緒なわけなので中々うまくいかないところがあり、元旦那が外に働きに出るようになりました。そこから私が農業を手伝うようになったんです。
―農業では何を作っていますか?
お米とだだちゃ豆と雪中軟白ネギをハウスで作っています。雪中軟白ネギというのはハウスで作っている白ネギで、都内にも行っていると思うのですが…。今は農閑期です。この後はお米の育苗をしたり、だだちゃ豆の種蒔きなどが徐々に始まってくる感じ。基本は両親との3人ですが、だだちゃ豆の収穫時期は忙しくなるので午前中だけパートさん4人くらいにほぼ毎日来てもらっています。JA出荷や、ポケットマルシェ、食べチョク(産直EC)に出品させて貰っています。
―移住してからの繋がりはどんなところで生まれますか?
地元のマルシェイベントに遊びに行ったり、興味のあるイベントに顔を出していくうちに、そこでよく会う人ができてきました。そこからちょっとずつ繋がっていったのかなと思います。私の場合は子供がいたので子供からの繋がり、ママ友とか。基本的に自分から動いて繋がりを作っていきます。私の場合は農業系か子育て系が多かったです。それ以外もきっとあるんじゃないかなと思います。
―さっき、シガラミもあるって聞こえたのですが、そのあたり聞いても良いですか?こんなはずじゃなかったのに…みたいなとか。
まず第一に、同居しなければよかったですね(笑)。短い期間、実家を離れて戻ってくるのであれば問題なかったと思うのですが、親と離れていた期間が十数年になるとそれぞれの生活ペースが出来上がっていて、価値観も変わっていて空白の時間は中々埋まらないですよね。それから、地域の周りの目みたいなのは常にあるなって思います。今はもうあまり気にしてないけれど。
麻都香さんの家はどうですか?
―良くも悪くもみんな見られている。良い面もあるんですけどね。捉え方ですかねー。みんな心配してくれてるって。「家に車なかったね。」とか「車いっぱい家の前に止まってたねー。」とか言われる。笑
<子育て環境>
-静岡と鶴岡で子育てする時に悩みはありましたか?
あんまりなかったかな。静岡にいた時は、私は仕事をしていなかったし、一時保育を利用して自分の時間を作ったりしていました。3歳になるタイミングくらいで鶴岡に戻ってきて思うのは、親に看て貰えるというありがたさはありましたね。それに保育園も空きがあるのでその点が良いなと思う。場所を選ばなければスルッと入れますよね。
―恵美さんのお子さんを見ているとすごくノビノビしていて。おじいちゃん、おばあちゃんと一緒にいると良いこともあるのかなって思うのですが…。
上が小学校4年生で、下は小学校1年生なのですが、自由奔放で…。(笑)最近言葉遣いも悪くなってきて。「うるせぇ。」とか言い始めて、女子も男子もですね。これはちょっとって思います…。(笑)
―農業の繁忙期は、子供たちは何をしてますか?
小さい頃は枝豆の袋詰めを手伝ってくれたのですが、今はまったく…。(笑) 休みとなればゲームをしたりYoutubeを観たり。1日中そんな感じです。このままでいいのかなという葛藤はあります。特に夏は、まったく手を掛けられなくなってしまいます。夕方3~4時くらいに一通り落ち着くのでいいんですけど、どこか遊びに行くとかほぼできないです。罪悪感はかなり持っています…。
―農業だと身近に子供たちもいられるというか、そういう環境が羨ましく思います。
農家や自営業はそうだと思います。学校から帰ってくると「お帰り。」って言える環境なのはいいですよね。ただ『お母さんは大した仕事をしていない』と思われているらしく、「友達の家に送って。」って言われて「おいおいおい…。いるけど仕事してるんだぞ」って。(笑)
―今後の目標はありますか?
両親が70代後半になっているので人を雇うとか、今の作物だけでいいのかなとよく考えます。常に重たい課題がずっとある感じです。とはいえ楽しく自分がやりたいことをやっていく予定です。JAや地元の飲食店に卸したり、ポケットマルシェや食べチョクに出してみたり。産直ECサイトは去年初めて登録してだだちゃ豆を出したのですが、新規登録者をトップページに出してくれるというのがあって想像以上に注文を頂きました。今年はそこまではいかないかなと思っています。産直ECはだだちゃ豆とネギしか出していません。特にだだちゃ豆は鶴岡だと競合がいっぱいだけど西のほうにいくと認知度がないので、そっちに広げていきたいです。地域の産直には一時期出していたけどもろもろ大変だったので今は出して無いです。
―産直では卸していないけど、野菜は買えますか?
私に直接言って頂ければ大丈夫ですよ。産直だと出荷はもちろんですが、店頭在庫の調整があって自分の時間が上手にとれなくてお休みしている状況ですね。自分勝手な話なんですが、自分の負担も少なくて地元で流通経路があったらいいなと思います。
<参加者からの質問>
多拠点生活を考えていて、シーズンバイト的に色んな地方を回りたいと思っているのですが、鶴岡にはそういうチャンスありますか?
⇒あると思います。サクランボからだだちゃ豆くらいの期間が一番多いと思います。6~9月くらいで、この期間はどこの農家さんも人手を募集しています。あとは住むところを確保すればって感じですかね。気を遣わなくていい人だったら泊まり込みでとも思いますが、きっと途中からお互い気を遣い始めて難しくなるんじゃないでしょうか。短期間だったらアリだと思うのですけど。
―西日本のみかんのお仕事とかだと住む場所もあってっていうのがあるみたいですけど、山形はそんなにないみたいで…。住むところも仕事もあったらもっと色んな人が来れるのになぁって思いますよね。
<編集後記>
録画したズームビデオを見ながらイベントを振り返っていて、なんだか落ち着いてみられるのは3人ともに地に足が着いた言葉を話していたからだと思う。それぞれにご縁があって鶴岡へ辿り着き、なんだかんだあっても楽しく暮らしていることを伝えてくれた。
佐藤高彦さんの話の中で、余裕があるというキーワードが出てきました。都会の生活では得られなかった“時間的余裕”を鶴岡で手に入れ、家族と過ごすことや自身活動など充実した暮らしをしているとのことでした。思えば、僕が鶴岡移住して3年ほど経った頃から田舎のリズムに慣れ、池の鯉や星空を眺めたり、鳥を観たりしている。なんとなく目の前に素晴らしい自然があって、その風景を消化していられるのも地方で暮らす良さなのかもしれないなーと感じます。もう一つ、参加者が指摘してくれた通勤時間の盲点も、庄内という日本海に面しながらも山に陸封された土地で暮らすことがベースにあることが働き方にも影響していることを感じました。
それにしても毎回、参加者から頂くアンケートに、「楽しかった!」と一言いただけるのがとても嬉しい。この場を通じて交流できて、今後なにかのキッカケで会うことができたらそれはとても素敵なことだと思うし、そうなって欲しいなぁと思っています。
次回でわたしの移住作戦会議。は最終回となります。どんな話ができるか、今から楽しみです!
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